令和6年度地域脱炭素実現に向けた中核人材の確保・育成委託業務

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第1回 自治体が地域エネルギーに取り組むべき理由

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テーマ1 脱炭素の潮流と地域が考えるべきこと(富士通総研 上保裕典)

第1回セミナーに登壇した富士通総研プリンシパルコンサルタントの上保裕典氏からは、「脱炭素の潮流と地域が考えるべきこと」をテーマにお話をいただきました。以下、セミナーでお話いただいたことをダイジェストでお伝えします。

ポイント

  • 「脱炭素」は地球規模で起きている潮流
  • 「地域脱炭素(脱炭素社会)」とは、単なる脱炭素だけではなく、地域課題の解決も考えることが重要
  • 「地域脱炭素」は、目的と手段を明確にし、それを実行する主体が必須

海外・我が国における脱炭素の潮流

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脱炭素の動きは世界的に加速し、多くの国がカーボンニュートラルを表明しています。
各国の2050年の目標達成に追加的に必要なCO2削減量の部門別比率(非電力)を見ると、米国では運輸部門、EUでは民生部門、日本や中国では産業部門でのCO2削減が課題となっています。このように、それぞれの国の情勢によって取組む部分が様々であるといえます。
企業について言うと、パリ協定を契機に、企業が脱炭素経営に取組む動きが進展しています。こうした企業の取組みは、企業価値の向上や他社との差別化、ビジネスチャンスの獲得にもつながると考えられます。
海外の小さな地域の例として、ドイツのライン・フンスリュック郡では、エネルギーというテーマに取り組むとき、「地域の活動」という文脈においてエネルギーがどのように扱われているかが常に意識されています。村が設置した風力発電による利益で、空き家を買い取って改修したり(移住者へ提供)、緑化や石畳を整備して伝統的な景観を整備したりするなど、村民にプラスとなる事業が行われています。人口300人程度の少ない村でもこうした、脱炭素社会に繋がる取組みがされています。

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EUは、ロシア産化石燃料から脱却するため、2022年3月に「REPowerEU」を公表しました。2030年の最終エネルギー消費に対する再エネ導入目標を45%に設定し、そのために、「省エネ」・「エネルギー供給の多様化」・「クリーンエネルギーへの移行の加速」を3つの柱としています。

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次に、日本の脱炭素の潮流についてお話します。我が国は、2019年度の電源構成における非化石割合24%を、2030年度には59%に引き上げることを目標に掲げています。再エネの比率としては、2019年度の18%を2030年度に36~38%に引き上げる目標です。
そのような中で、再エネを普及させるためのFIT(固定価格買取制度)も状況が変わってきています。FIT太陽光の調達価格は2012年比で1/4~1/2の価格に下がっています。こうなると、太陽光を設置した需要家は、売電するよりもできるだけ自家消費したほうがお得になります。また、FITの認定要件としても、自家消費されること・設置した都道府県内で消費されること・防災に資することなどがFIT認定の新たな要件(事業用太陽光などの一部電源)となってきています。
自家消費の文脈では、第三者所有の太陽光発電設備から再エネ電気を長期購入することで、初期投資なしで太陽光発電を導入することが可能なPPA(Power Purchase Agreement)が注目されています。PPAには、初期費用がゼロであることや、屋根などの未利用スペースが活用できることなど様々なメリットがあります。ただし、長期契約(15~20年が一般的)が必要になることには注意が必要です。

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2050年ゼロカーボンを表明する自治体も急増しています。これを具体的に進めていくため、国において脱炭素先行地域の募集・選定が行われています。第1回の先行地域に選定された地域を見ると、「取組む意義や必要性が明確化されている」・「地方公共団体の強いリーダーシップがある」・「地域経済の循環や地域課題の解決・住民の暮らしの質の向上につながる取組である」といった提案をされた自治体が高く評価されています。

「地域脱炭素」が 目指すこと・考えるべきこと

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地域脱炭素(脱炭素社会)とは、脱炭素×地域課題解決を目指すものです。課題は地域によって様々ですが、外部に流出している資金を地域内で循環させ雇用を創出する、防災能力を高めることなど、脱炭素と結び付けて地域の価値を向上させていくことが大事です。

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脱炭素を進めつつ、経済活動を維持・成長させていくための式があります。考え方を整理すると、①省エネによってエネルギー効率を高めること、②再エネ導入などによってCO2排出原単位を抑えること、③一方で、経済活動量は減らさないこと。この掛け合わせで環境と経済の両立を目指していくということを、この式は示しています。

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地域脱炭素は、課題解決の視点が大事になります。その時、途中で何のためにやっているのかを見失うことがあります。そこで、目的・手段・主体の3つを明確にすることが重要なポイントです。
事業を検討していく中で目的から外れ、最終的に手段が目的化されるケースもあります。例えば、地域新電力設立で多いケースとして、お金の回し方をあまり考えずに、周りもやっているからという理由で地域新電力に飛びついてしまい、また主体も考えずに進め、設立したことがゴールになってしまうことがあります。そうなると、持続性のない残念な結果となります。こうしたことには注意していかないといけません。
地域脱炭素には、目的に応じた主体を検討することが重要です。地域新電力を設立するにしても、自治体出資の有無や、参加者を地域内外のどちらから集めるのかなど、いくつかパターンがあります。その中で、自地域の目的に合う地域新電力の形はどれかをしっかり考えることが重要です。おそらく、地域経済循環の視点から見ると自治体を含め地域内の企業が出資等連携して設立するのが望ましいのだと思われますが、一長一短ありますので、それぞれの地域の目的と照らし合わせて考えることが必要です。

今後の講座(全5回)を通じ、今回お話した目的・手段・主体について学んでいっていただきたいと考えています。

テーマ2 自治体が地域エネルギー事業に取り組むべき5つの理由
(一般社団法人ローカルグッド創成支援機構事務局長 稲垣憲治)

一般社団法人ローカルグッド創成支援機構事務局長の稲垣憲治氏からは、「自治体が地域エネルギー事業に取り組むべき5つの理由」をテーマにお話をいただきました。
以下、セミナーでお話いただいたことをダイジェストでお伝えします。

ポイント

  • 地域エネルギー事業・脱炭素を手段として「地域発展」することが可能
  • ますます自治体職員が「動くことが」重要に

自治体が地域エネルギー事業に取り組むべき理由1「地域にお金が留まるから」

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自治体が地域エネルギーに取り組むことは「地域にお金が留まる」ことに結び付きます。エネルギー消費に係る莫大な地域外への「お金の流出を防ぐ」ことは、地域にとっては「外貨を稼ぐ」ことと同様に重要です。

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環境省の地域循環分析ツールを用いると、各自治体でどれくらいのエネルギー代金が域外流出しているかを簡易的に把握することができます。
岡山県真庭市を例にこのツールで分析すると、バイオマス事業の実施によりエネルギー代金の流出額が年間24億円から3億円に減額し、約21億円が域内に留まったことがわかります。各自治体におかれても環境省の地域循環分析ツールを使用し現状を把握してみることをお勧めします。
地域エネルギー事業は地域が手堅く収益を確保できる可能性の高い取り組みといえますが、注意すべきポイントは地域主体の出資・運営でなくては地域経済への波及効果が弱いという点です。売電収入や事業ノウハウを地域内に留めるためにも、地域でできる部分とできない部分を切り分け、できる部分は地域で取り組むようにしたいところです。

■環境省地域経済循環分析ツール
https://www.env.go.jp/policy/circulation/

自治体が地域エネルギー事業に取り組むべき理由2「地域課題の同時解決ができるから」

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地域課題を把握し、地域主体で地域エネルギー事業を実施することで、地域課題の解決を同時に達成することも可能です。
 遊休地にメガソーラーを設置し、地域課題であったイノシシによる獣害が防止された宮津市を事例として紹介します。宮津市の地域課題解決型メガソーラー事業においてキーマンとなったのは、地域のハブ機能を果たした自治体職員です。この自治体職員の動きでポイントとなるのは、地域課題を把握していたこと・事業者から太陽光発電開発の提案を受けた際に地域課題解決と再エネを結び付けたこと・地域主体での実施のために地元企業や地域金融機関を繋げたこと・複数所有者の土地合筆に向けて自治会を巻き込んだこと等が挙げられます。
本講座を受講されている自治体職員の皆様には、公平性を担保しながらも地域企業等を巻き込み地域の利益になる事業を前に進めていただけたらと期待しています。

自治体が地域エネルギー事業に取り組むべき理由3「再エネが地域の競争力・ブランデングにつながるから」

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日本国内においてRE100企業や再エネ100宣言に加盟する企業は年々増加しており、そうした企業に対して再エネを供給できることが地域の競争力となりつつあります。
再エネによる地域ブランディングで企業誘致をしている石狩市、地域名所であるお城の電気を100%再エネ化した福知山市、ゼロカーボンベースボールパーク構想を進め脱炭素先行地域にも選定された尼崎市のように、再エネによって地域の価値をさらに高める事例も出てきています。

自治体が地域エネルギー事業に取り組むべき理由4「脱炭素の切り札「再エネ」の命運は地域が握るから」

理由の4つ目は「脱炭素の切り札「再エネ」の命運は地域が握るから」という点です。
FIT制度などにより再エネ導入が拡大した半面、地域の景観に様々な問題・課題を残すという事態も発生しました。再エネを増やしていくためには、地域の理解が重要です。再エネ促進区域とそうでない区域を分けるゾーニングの実施などを自治体が担うことによって地域と共生した再エネを増やしていきましょう。

自治体が地域エネルギー事業に取り組むべき理由5「地域のレジリエンス向上につながるから」

理由の5つ目は「地域のレジリエンス向上につながるから」という点です。 太陽光発電の建物設置により停電時の非常用電源となりますし、蓄電池導入により電気を溜め太陽光発電が稼働しない夜間などにも電気供給可能となります。 また、福島県葛尾村のように、エリア全体で停電を防ぎレジリエンス向上を目指す地域マイクログリッド事業も全国に広がりつつあります。

まとめ

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脱炭素の取り組みは「まちづくり」の取り組みです。脱炭素だけで考えるのではなく、地域課題解決や、地域発展とつなげて、地域の脱炭素政策を考えていきましょう。

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「地域にノウハウがないから難しいのでは?」という質問をよくいただきますが、本セミナーのような場を利用してネットワーク形成し、地域外から獲得したノウハウを基に地域でできることを増やしていくことも可能です。地域エネルギー・脱炭素分野は、自治体としても前向きなことがたくさんでき、それが地域発展、ひいては日本・世界を変えられる「楽しい」分野です。ぜひ地域のために一緒に取組を進めましょう。